近視進行抑制の治療法

  • 2014.02.26 Wednesday
  • 23:58
本日のYahooJAPANのニューストピックスでも、青森県の学童近視が話題に上がっていました。小児眼科のカテゴリーでは、学童近視は避けて通れない話題ですので、近視進行抑制の治療における最新情報を今回のお題にしたいと思います。
 
まず、予備知識として、近視進行の危険因子と予防法は、欧米のいくつかの大規模な研究の結果から、ここ数年で明らかになっております。
 
1.近視には遺伝的な因子が最も強く関係する(両親が近視だと78倍、片方なら23倍)
2.都市部に居住する方が近視になる
3.IQ、学歴が高い方が近視になる
4.近業(長時間、読書量大、近距離)が多い方が近視になる
5.戸外活動が多い方が近視を抑制する
 
これまで、さまざまな近視進行抑制の治療法が検討されてきましたが、近年、比較的有望な治療法がいくつか絞られてきました。その代表的なものは、多焦点眼鏡、低濃度アトロピン点眼、オルソケラトロジー(夜間装用コンタクトレンズ)です。これらの治療法の最新情報(2012-2014)をいくつか紹介します。
 
小児の近視進行に対する多焦点・プリズム多焦点眼鏡の影響
Effect of Bifocal and Prismatic Bifocal Spectacles on Myopia Progression in Children: Three-Year Results of a Randomized Clinical Trial.
Cheng D, Woo GC, Drobe B, Schmid KL.
JAMA Ophthalmol. 2014 Jan 16 [Epub ahead of print]
 
小児の近視に対するアトロピン点眼治療(0.5%・0.1%・0.01%の安全性と影響)
Atropine for the treatment of childhood myopia: safety and efficacy of 0.5%, 0.1%, and 0.01% doses (Atropine for the Treatment of Myopia 2).
Chia A, Chua WH, Cheung YB, Wong WL, Lingham A, Fong A, Tan D.
Ophthalmology. 2012 Feb;119(2):347-54
 
小児の近視抑制におけるオルソケラトロジーの長期成績
Long-term effect of overnight orthokeratology on axial length elongation in childhood myopia: a 5-year follow-up study.
Hiraoka T, Kakita T, Okamoto F, Takahashi H, Oshika T.
Invest Ophthalmol Vis Sci. 2012 Jun 22;53(7)
 
3誌の成績を要約すると、治療開始2年間における1年あたりの近視抑制効果は、眼軸伸長の抑制効果換算(mm/year)で、
 
0.08mm;多焦点眼鏡
0.09mm;プリズム多焦点眼鏡
0.20mm;1%アトロピン点眼(Tan Dらの既報)
1%アトロピン点眼と0.5%アトロピン点眼で近視抑制効果に差がない
0.5%アトロピン点眼と0.01%アトロピン点眼の抑制効果の差は0.047mm/year
(−0.15mm0.01%アトロピン点眼?)
0.13mm;オルソケラトロジー
 
Tan Dらのデータ(Ophthalmology 2006)において、アジア人(シンガポール)の612歳、近視が−16Dの児童で、自然経過では眼軸伸長が0.19mm/year(偏差が大きいため点眼抑制値より小さい)なので、いずれの治療法もけっこう有効に進行を抑制している印象です。0.01%アトロピン点眼とオルソケラトロジーは、ほぼ同等の進行抑制効果ですが、毎日点眼や夜間コンタクトは小児ではやや煩雑です。抑制効果はやや劣りますが、多焦点眼鏡が利便性はよさそうです。(1%アトロピン点眼は近視進行を強力に抑制しますが、副作用のため現実的には困難です。)
 
いずれの治療法も臨床試験がさまざまな施設で行われているので、近いうちに一般診療でも導入されてくるかもしれません。
 
一点、注意喚起したいところは、これらの治療法は「近視が治るわけではない」ということです。軸性近視は、眼軸長が相対的に伸びることによって起こりますが、治療によって眼軸が縮むということは理論上ありえません。なので、一旦近視になった場合には、近視が元にもどることはないです。
 
これらの治療法は、あくまで近視進行抑制です。厚労省研究班平成17年度調査報告書では、強度近視は失明原因の6位(網脈絡膜委縮と含めると5位)です。また、近視の程度が強いほど、将来緑内障の発症リスクが高まります。眼科医にとって、近視の進行抑制はきわめて社会的意義の大きい治療です。
 
一般的に「近視治療」というとメガネをはずすための治療と思われがちですが、近視進行抑制が社会的意義の大きい治療であることを広報することも、眼科医の仕事のひとつではないかと思っています。

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